2024年5月12日から始まった、鬼滅の刃アニメ第4期『柱稽古編』。
オープニングテーマはMY FIRST STORY×HYDEによる『夢幻』ですが、なかなか奥が深そうな歌詞をしていると思いませんか?(笑)
そこで今回はこの『夢幻』の歌詞にはどんな意味が隠されているのか、深堀りしていきたいと思います。
- 原作のネタバレを含みますのでご注意ください!
- あくまでも私個人の意見です。
- 他の方と解釈の違いがあることをあらかじめご了承ください。
- 歌詞の著作権は著作者様に帰属いたします。
- EDテーマ『永久-トコシエ-』の解説はこちら。
柱稽古編OPテーマ『夢幻』は無惨へのメッセージ
今回の曲を映画館ではじめて聴いたとき、私は以下のように感じました。
この夢幻という曲は鬼殺隊の長・産屋敷耀哉から鬼の長・鬼舞辻無惨に向けたメッセージであると。
なかでも、サビの一節がそれをあらわしているように感じます。
永遠の意味 知らぬ君に
答えを示す時だ
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
私はこの歌詞を以下のように解釈しています。
『永遠』という言葉の本当の意味を君(無惨)はまだ知らないようだね。
だからいまこそ私が教えてあげよう。
君が『永遠』だと考えているものはただの『夢幻』なんだと。
つまりお館様は無惨に対して
君の考える『永遠』はただの『ゆめ』や『まぼろし』なんだよ
と言っているんですね。
では無惨にとって『永遠』とは何をさすのでしょうか?
そしてお館様の言う『永遠』とは何を意味するのでしょうか?
原作16巻137話「不滅」を引用して解説します。
無惨にとっての『永遠』
時は平安時代──
病の進行により、このままでは20歳まで生きられないと医者に告げられていた無惨は「何がなんでも生きたい」と思うようになりました。
最初は単純に「長生きしたい」と願っていたのでしょう。
病気が治ったら好きなものを食べて、外に出歩いて…という普通のことを夢見ていたはずです
ところが医者の処方した『青い彼岸花』は人間として病気を治すのではなく、彼を鬼として覚醒させてしまいました。
これはラッキー!と無惨は思ったのでしょう。
これで長生きができると。
しかしながら、鬼となっても弱点はありました。
太陽の下を歩けない。
これではいつか太陽に焼かれて命に「終わり」が来てしまうかもしれない。
そう考えた無惨は唯一の弱点である『太陽』を克服すべく、鬼を増やし続けていたのです。
すべては生きながらえるため。永遠の命を手に入れるためです。
つまり無惨にとっての永遠は『不滅の命』なのです。
お館様にとっての『永遠』
一方、お館様の意見は違います。
個体によって差はあるけれど、この世に生を受けたものは等しく命の終焉をむかえるもの。
永遠の命などはないと考えています。
しかし体は滅んでしまっても、人の想いだけはずっと受け継がれてゆく。
これまで何度も鬼殺隊は壊滅の危機に瀕していましたが、愛する人をうしなった悲しみや怒り、そして誰かを守りたいという想いは消えず、かならず誰かが受け継いでゆくのです。
煉獄さんに守ってもらった命、そして彼の想いを受け継いだ炭治郎のように
だからこそ16巻で無惨が産屋敷邸にやってきたとき、お館様はこう告げました。
永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり不滅なんだよ。
(鬼滅の刃16巻 137話「不滅」より)
つまりお館様にとっての永遠は『人の想い』なのです。
無惨が死ねば『永遠』は『夢幻』になる
これまでの話を一見すると
無惨の考える『永遠(つまり永遠の命)』って別に間違ってないんじゃない?
と思う方がいらっしゃるかもしれません。
もちろん現実世界でも、古代から不老不死を求める権力者が大勢いましたし、間違いではありません。
しかしお館様は無惨の考える永遠を『夢』と呼び、その夢がかなわないと言います。
君は永遠を夢見ている…不滅を夢見ている…(中略)君の夢は叶わないよ、無惨
(鬼滅の刃16巻 137話「不滅」より)
なぜなら無惨の考える永遠は、無惨が死ねば終わってしまうからです。
鬼の始祖である無惨は鬼を生み出すことはできます。
なのに始祖である無惨が死ねば、すべての鬼がこの世から消えてしまう。
生み出した鬼の誰もが無惨の永遠の命を継いではくれません。
一方の鬼殺隊は先述のとおり、たとえ身が滅びようとも誰かが『想い』を受け継いでいきます。
もちろんお館様が死んでも、次代の輝利哉くんが「お館様」という立場を引き継いでくれる。
だって組織には多くの人がいるから。
そのひとたちがいる限り永遠に『無惨をたおす』という想いは受け継がれてゆく。
だからお館様は
受け継ぐ相手のいない君(無惨)の考える『永遠』なんて『はかないもの』だよね
と言っているのです。
これが今回のオープニングテーマ『夢幻』にこめられた意味であり、お館様から無惨に対するメッセージだと考える理由です。
柱稽古編OPテーマ『夢幻』1番の歌詞の意味
儚い未来手繰った弱さとは?
さて、『夢幻』という曲がお館様から無惨へのメッセージであることを大前提として、今度は1番のAメロにフォーカスを当ててみましょう。
言い訳に聞こえた理由は
儚い未来手繰った弱さ
それを強さとはき違えている
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
いきなり「よ~わからんな~」という歌詞が出てきますね
この部分が一番むずかしくて何度も何度も書き直しました(笑)
- 儚い未来って何?
- 何を弱さって言ってるの?
- 強さって強がりのこと?
う~ん、いまだに何を指しているのかズバリ当てることができません。
ただ歌詞のなかで『弱さ』という表現がある以上、
- 弱さ=命がつきることへの恐怖心
- 強さ=命が永遠に続くこと、完璧な存在になること
みたいなニュアンスなのかな、と。
であれば、こう翻訳するのもアリでしょうか。
君は永遠の命(太陽を克服した禰豆子)を手に入れることで『完璧な存在』になれると言うけれど、私にはそれが言い訳のように聞こえるよ。
本当は命を落とすことが怖いだけなんだろう?なぜなら君がいなくなれば受け継ぐ者がいなくなるから。だからこそ『永遠の命』を求めているんだろう?
無惨の根底には「自分を継ぐ者がいない」という恐怖がすくなからずあるんじゃないかなぁと個人的には考えています。
月を隠すほどの…の意味には2パターンある
そして次のBメロパートは
憎い 憎い
醜い 醜い
月を隠すほどの
黒く 黒く
淀む 心
君さえいなければ
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
ですが、これの解釈は2パターンあると思っています。
パターン①は単純に「月を隠す=憎しみでいっぱいになる」と考えるもの。
無惨がいるせいで鬼が増え、多くの人が犠牲になったんだ。君さえいなければ大勢の人が憎しみを、黒く淀んだ心を持つことなんてなかったのに…
パターン②は「月を隠すほどの」をかなり深読みしたものです。
歴戦の鬼殺隊士でさえ、君の毒牙にかかり鬼に堕ちてしまった。君さえいなければ人間のままでいられたのに
パターン②に関しては「はじまりの呼吸の剣士」のひとりであった上弦の壱「黒死牟」が月の呼吸を使うので、それを想定した内容になっています。
もしくは鬼殺隊士であった善逸の兄弟子・獪岳が黒死牟の手によって鬼に変貌したことを憂いているとも取れますね。
獪岳の鬼化によって師匠の桑島慈悟郎さんが責任を取り、介錯なしで切腹をした話は、すでにお館様の耳に入っているはずですから、それを悲しんでいるととらえることもできるな…と感じました。
サビの頭はボーカルふたりで歌い分け
次がサビの頭の部分になります。
ゆらいでいる ゆらいでいる
花のように意志をつなぐ
奪っていく 奪っていく
嵐のように心を割く
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
青字が鬼殺隊側、赤字が無惨側の内容です。
マイファスHiroさんが鬼殺隊のことを、HYDEさんが無惨のことを歌っていますね。
ここでは鬼殺隊のことを「花」と表現しています。
花は嵐(鬼)が来ることで揺れたり折れたりするけれど、根絶やしにされないかぎり、種(受け継いだ想い)さえあればまた咲くんだ。
つまり、鬼殺隊の想いは不滅であるということをあらわしています。
一方、鬼(無惨)のことを「嵐」と表現しています。
嵐は突然あらわれて命をうばってゆく。そして殺された人の家族や仲間の心を深く傷つけてゆくんだ。
ということが書かれていますね。
螺旋の先で待つのは誰?の意味
さて今回のサビのなかで
夢幻に続く螺旋の先で
待つのは誰
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
というフレーズがあります。
解釈の分かれるところだと思いますが、私は『螺旋』を
- DNA
- 受け継ぐ想い
と読み替えてみました。
無惨は『不滅の命』を『永遠』だと信じています。
だけど彼のDNAや想いは無惨が消滅することで途絶えてしまう。
だって無惨がいなくなったら鬼は全滅するのですから。
無惨の意志を誰も引き継いではくれないのです。
夢幻に続く螺旋の先で
待つのは誰
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
これはお館様から無惨に対する問いです。
君が求める永遠の命は『夢幻』だよ。君の意志を誰も引き継いではくれない。
それでも『夢幻』を『永遠』だと信じて追い求め続けるんだね。
だけど『夢幻』の先で君を待っている人は誰なのかな?
その答えは歌詞のなかで明言されていませんが、私は「誰もいない」としました。
無惨の意志を引き継ぐ人間はいないからです。
その代わり、目の前に立っているのは鬼殺隊士たち。
彼らは虎視眈々と無惨の命をねらっているのです。
柱稽古編OPテーマ『夢幻』Cメロの歌詞の意味
最後にアニメでは登場しないCメロについて解説します。
大前提としてこの曲がお館様から無惨へのメッセージであること理解したうえでご覧ください。
鬼哭に耳を傾けた仕舞よ
この身に宿る万物で終いよ
夢幻を他者に託した弱き人
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
まず『鬼哭』についてですが『浮かばれない死者の魂が泣く声』のことを言います。
つまりこれは無惨や鬼たちに殺されてしまった人たちの声と読み取ることができます。
また『この身に宿る万物』とはあたえられたかぎりある命と読み替えます。
『仕舞』と『終い』は双方とも終わりを意味する言葉なので、この歌詞を私はこのように考えました。
浮かばれない死者の声に耳を傾けるだけでいいのに、この身に宿る命は永遠ではないのだと理解するだけで済むのに
君は『夢幻』である『永遠の命』を求め続け、太陽を克服するために鬼(他者)を増やしてゆく弱き人だ
続いてはこちらの歌詞です。
命の輝きは幾星霜に
祈りの瞬きが照らす斜陽に
千夜を身に宿し
解を押し付ける
(MY FIRST STORY × HYDE 『夢幻』より)
『幾星霜』とは非常に長い年月が経過したことをあらわす言葉です。
そして『斜陽』とは西に傾いた太陽、あるいは衰退してゆくことを意味します。
この『斜陽』をどうとらえるかで解釈が変わってくると思いますが、私は
斜陽=鬼によって蝕まれる世界
と翻訳してみました。
戦国の世からこれまで、本当に長いあいだ、鬼殺隊士たちは愛するひとたちを守るために命を輝かせているんだ。
そして彼らはずっと祈っている。鬼によって蝕まれた世界から人々が解放されることを。
だというのに君は千年という気の遠くなる時間、おのれの『永遠』を得たいがために欲望を私たちに押し付けているんだ。
いかがでしょうか?
こう考えるとお館様の想いがひしひしと伝わってくるような気がしませんか?
柱稽古編OPはアニメ映像にも注目!
ここまで1番とCメロの歌詞を解説してきました。
内容をまとめると以下のとおりです。
- この曲はお館様から無惨にむけたメッセージ
- 無惨にとっての『永遠』は『永遠の命』
- その欲求を満たすためにたくさんの人が犠牲になった
- たくさんの隊士たちが犠牲になった
- それでも鬼殺隊は続いてゆく
- なぜなら鬼殺隊にとっての『永遠』とは『人の想い』だから
- だれかを守りたいと願う『人の想い』は不滅
- 無惨の求める『永遠』は無惨をたおすことで『夢幻』になる
- そのために鬼殺隊は想いをつなぎ今日も刀をふるう
こんなところでしょうか。
Bメロのアニメ映像にも注目してほしい
ところでOPに使用されているアニメ映像、Bメロから無惨の変遷が描かれていますね。
無惨の衣装が平安にはじまり、戦国~江戸、明治、大正と変わってゆくのですが、それに応じて背景に刺さった刀が増えていきます。
これは無惨や鬼たちに立ち向かっていった過去の鬼殺隊士たちの刀。
彼らの想いを背負って最終決戦へと向かっていくんだという強い意志がこの映像のなかに見て取れました。
ぜひ全編とおして聴いてみて!
MY FIRST STORY×HYDE『夢幻』は約4分の曲となっています。
2番からCメロにかけて聴いてみると、やっぱりお館様の想いが詰まった一曲だなぁと感じるので、ぜひCDや配信サイトで聴いてみてくださいね♪
- CDリリース:6/5(水)
- 配信開始日:5/13(月)
各種配信サイトはこちらからご確認ください。