「鬼滅の刃」には原作のほかに小説が3冊出ています。
一作目は「しあわせの花」二作目は「片羽の蝶」そして三作目は「風の道しるべ」です。
すべてジャンプ ジェイ ブックス(JUMPjBOOKS)から出版されています
小説版は、原作に負けず劣らず内容が良い(+面白い)のと、原作では描き切れなかった部分(キャラクターの背景など)をうまく補完してくれており、購入してよかったなと思っています。
ということで、今後は読んだ小説の感想を1作ずつ、ちまちまと書いていこうと思います。
まず最初にご紹介するのは、第二作「片羽の蝶」の第1話「片羽の蝶」です。
多分にネタバレしております。原作23巻まですべて読み終わった方のみ、閲覧をお願いいたします。
片羽の蝶の概要と登場人物
「片羽の蝶」は小説「片羽の蝶」の第1話として収録されているお話です。
登場人物は
- 悲鳴嶼行冥
- 胡蝶カナエ
- 胡蝶しのぶ
の3人。
両親を鬼に殺された胡蝶姉妹。そんな姉妹を助けたのは悲鳴嶼だった。鬼を斬った半月後、悲鳴嶼の屋敷に姉妹が訪れ「鬼狩りになる方法を教えてほしい」と懇願する。しかし、悲鳴嶼は気が乗らず追い返そうとする。そこには悲鳴嶼の複雑な過去が絡み合っていて――
原作軸では悲鳴嶼さんは27歳、しのぶさんは18歳(カナエさん:生きていれば21歳)の設定ですが、今回の「片羽の蝶」は挿絵の感じから、おそらく7~8年ほど前の設定かと思います。
仮に8年前だとすると
- 悲鳴嶼さん:19歳
- カナエさん:13歳
- しのぶさん:10歳
ということになります。
悲鳴嶼さんは19歳で柱になっているため、時系列的にもこの設定で問題ないと思います。
ちなみに悲鳴嶼さんが、お館さまに出会ったのが18歳です
カナエさんは17歳(亡くなる歳)の時点ですでに花柱でした。16歳ごろに柱になったと仮定して、逆算して14歳ごろに最終選別を通ったと考えれば妥当でしょうか。
しのぶさんはカナエさんの3つ年下なのと、言動がかなり幼いので10歳でも問題ないかと思います。
こう考えると、胡蝶姉妹は両方とも柱になっており、とても優秀だということがわかりますね!
片羽の蝶の感想&ネタバレ
ここからはネタバレを含んだ感想や考察を書いていきます!
思いついた内容を書きなぐっているので、分かりづらい部分もあるかもしれませんが、ご了承ください。
悲鳴嶼さんの葛藤
「片羽の蝶」冒頭で、鬼から胡蝶姉妹を助けた悲鳴嶼さん。
もう二度と会わないだろうと思っていたのですが、彼女たちは突然として屋敷にやってきます。
胡蝶姉妹は幼い身ながら「鬼殺隊へ入隊したい」といいますが、悲鳴嶼さんは頑なにそれを受け入れてくれません。
理由は大きく分けて二つ。
- ①女性隊士が少ないから
- ②悲鳴嶼さんは「子ども」に因縁があったから
①については、おそらく皆さんもお分かりになると思いますが、「鬼滅の刃」という作品のなかで女性隊士の数は圧倒的に少ないです。
那田蜘蛛山で出てきた尾崎さん(キメ学設定で名前が出てきた女性)、蝶屋敷のアオイちゃん、恋柱の蜜璃ちゃん、それから胡蝶姉妹の5名だけです。
特にしのぶさんは同年代の子どもと比べても圧倒的に体が小さかったので、悲鳴嶼さんが渋る原因だったようですね。
それから②について。
悲鳴嶼さんはもともとお寺に住みながら、孤児を育てていました。
しかしある日、鬼にお堂を襲われ、小夜という少女を除いて全員殺されてしまいます。
小夜を守るために、鬼を夜通し殴り続けた悲鳴嶼さんでしたが、夜が明けて周囲が駆け付けたときに、小夜が「あの人がみんな殺した」と言ってしまいます。
小夜の言葉にショックを受け、悲鳴嶼さんは人間不信、特に子どもを信じなくなってしまいました。
後々わかるのですが、小夜の「あの人」は悲鳴嶼さんではなく、鬼のことを指していたそうで、小夜は十四歳になってもこの時のことを後悔しているようです
だからこそ、まだ幼い胡蝶姉妹の「鬼殺隊に入りたい」という言葉も最初はまったく信じていませんでした。
これは柱合会議での(炭治郎に対しての)「なんとみすぼらしい子供だ…生まれてきたこと自体が可哀想だ」という言葉につながっていきます。
けれど、胡蝶姉妹との不思議な「擬似家族ごっこ」を体験し、彼女たちの優しさ・純粋さに触れ、徐々にその心を解いていきます。
今回の小説では、胡蝶姉妹が入隊するまでの過程が描かれているのですが、同時に悲鳴嶼さんの「普通の女性として暮らしてほしい」という願いも込められています。
悲鳴嶼さんの悪(=厳しい人間)になりきれない心模様が丁寧に描かれているので、悲鳴嶼さん・胡蝶姉妹ファンはもちろんのこと、それ以外の方にも読んでほしい作品です。
カナエさんの優しさ
胡蝶姉妹の姉、カナエさんは鬼に両親を殺された直後でさえも落ち着きがあり、凛とした佇まいをしている子どもだったようです。
幼いころからお箏や、お花・お茶など一通りのお作法は習っていて、近所の男性たちが夢中になるくらい器量がよく、何でも上手にできてしまう自慢の娘さんでした。
しかし、唯一の欠点が「優しすぎるところ」でした。
彼女は「上弦の弐」に殺された時でさえも、鬼を憐れんでいたとの描写がありましたが、鬼殺隊に入隊しようとしている時点でも、この考えをベースにしていたようです。
悲鳴嶼さんが鬼殺隊への入隊を認めたくなかった理由のひとつになっていたと思います。
ただし、しのぶさんは幼かったため「カナエさんが鬼に対して憐れみを抱いている」ということには気づいてなかったように感じます。
しのぶさんの幼さと変化
今回の「片羽の蝶」では、胡蝶しのぶという女性の本来の性格が読み取れます。
悲鳴嶼さんの屋敷に来たときのしのぶさんは、甘えたで駄々っ子。感情の起伏が激しく、怒ると言葉も強くなります。
また夜中に両親のことを思い出して泣きわめく描写もあり、カナエさんと違って精神的な成熟さは見られません。
まあ当たり前ですよね、だって当時10歳とかでしたから
それは14歳で蝶屋敷の主人になる(つまりカナエさんが死ぬ)まで続き、そしてカナエさんの死をきっかけに「今のしのぶさん」が出来上がります。
小説を読んでいない方にとって、「胡蝶しのぶ=蟲柱」のイメージだと思いますが、しのぶさんの内側には、「本来の無邪気さ」と「四角四面さ」が残っています。
この本当の姿を知っている鬼殺隊のメンバーは数少なく、そのうちの一人が悲鳴嶼さん。
最終決戦に向かう直前の柱合会議(原作15巻:柱稽古の前)で悲鳴嶼さんが彼女を「しのぶ」と呼ぶシーンが描かれています。
そこの悲鳴嶼さんの心理描写が切なくて涙を誘います。
まるで、彼女が儚くなることを知っているかのように、苦しくなりました。
片羽の蝶、ぜひ読んでみてください
簡単ではありますが、ノベライズ第2作「片羽の蝶」から第1話「片羽の蝶」の感想をお届けしました。
この作品のなかでは、悲鳴嶼さんの心の葛藤、カナエさんの生前の姿、しのぶさんの幼いころの日々を垣間見ることができますので、ぜひ手に取ってみてください。
今後も、拙い感想ではありますが書いていこうと思います!